産後の尿漏れと痔

ベテラン助産師の本村啓子です

産後の尿漏れと痔は、出産後の身体の変化や負担によって引き起こされる問題です。

今回は、尿漏れと痔のそれぞれの原因、症状、改善方法について詳しく説明します。

 

尿漏れ

 

原因

 

骨盤底筋の弱化

出産によって骨盤底筋が弱くなることで、尿漏れが起こる場合があります。

出産中、子宮の収縮といきみにより一時的に緩むことがあります。



 また分娩では、会陰切開や裂傷が発生することがあり、

骨盤底筋の一部が切断されたり、損傷を受けることもあります。


これは骨盤底筋の機能を低下させ、弱くする要因となります。



姿勢の変化や運動不足


 妊娠中や出産後、姿勢の変化や運動不足によって骨盤底筋が弱くなることがあります。 


特に妊娠中は重力で腰や骨盤の負担が増えるため、正しい姿勢や適度な運動が重要ですが、

これらが十分に行われない場合、骨盤底筋の弱化につながる可能性があります。



ホルモンバランスの変化

妊娠中や出産後、ホルモンバランスの変化によって

尿道や尿失禁に関わる筋肉が影響を受け、

尿漏れが引き起こされることがあります。


妊娠中は、プロゲステロンとエストロゲンのレベルが上昇します。


これらのホルモンは、骨盤底筋の弾力性を高める役割を果たし、

分娩時に筋肉や組織の柔軟性を増加させます。


しかし、出産後にこれらのホルモンレベルが急激に低下すると、

骨盤底筋の弱化につながる可能性があります。


症状



咳やくしゃみ、笑いなどによる漏れ

咳をするときや、急激な体の動きをしたときに、少量の尿が漏れることがあります。

これは、骨盤底筋の弱体化によって、膀胱がうまく閉じられなくなるためです。


くしゃみをするときに、尿が漏れることがあります。

くしゃみは体に瞬間的な圧力をかけるため、

骨盤底筋が弱い場合には、膀胱がうまく閉じられずに尿が漏れることがあります。


 笑うときに、尿が漏れることがあります。

笑いによって腹部に圧力がかかるため、骨盤底筋が十分に強くないと

膀胱が正常にコントロールされず、尿が漏れることがあります。

 

重いものを持ち上げたり、突然の動作をするときにも、

尿が漏れることがあります。


体を動かすときに腹部や骨盤に圧力がかかり、骨盤底筋が十分にサポートできない場合に起こります。

 軽度の尿漏れから、咳やくしゃみ、笑いなどの身体的な動作によって尿が漏れることがあります。


頻尿

産後の頻尿は、出産時に骨盤底筋が伸展し、弱化することがあります。

これにより、尿のコントロールが難しくなり、頻尿の症状が現れることがあります。


 また、出産後、ホルモンの急激な変化によって、

膀胱の収縮能力が低下し、頻尿の症状が現れることがあります。


また、 妊娠中の子宮の拡大によって、膀胱が圧迫されたり

出産後も、子宮の収縮によって膀胱が圧迫されることがあり、頻尿の原因となります。


出産や育児のストレスによって、尿漏れや頻尿の症状が悪化することがあります。

ストレス性尿失禁は、膀胱の収縮を誘発し、頻尿を引き起こす可能性があります。

尿漏れが起こりやすくなることから、頻繁にトイレに行く必要が生じる場合があります。


改善方法

尿漏れを改善するためには、生活習慣の見直しが重要です。


 水分摂取量の調整


水分摂取量を適切に調整することが重要です。

過剰な水分摂取は頻尿や尿漏れを引き起こす可能性がありますが、

水分不足も尿路感染症や尿結石などのリスクを高める恐れがあります。

適度な水分摂取を心がけましょう。


 食事内容の見直し

 食事内容も尿漏れに影響を与える要因の一つです。

食物繊維やバランスの取れた栄養素を含む食事を心がけ、便秘や下痢を予防します。

また、カフェインやアルコールを過剰に摂取することも

尿漏れを悪化させる可能性があるため、適量を守るようにしましょう。


 適度な運動


運動は骨盤底筋を強化し、尿漏れを改善するのに役立ちます。

ウォーキングや水泳などの有酸素運動や、ピラティスやヨガなどの筋力トレーニングも効果的です。

ただし、過度な運動は逆効果になることがあるため、適度な運動を心がけましょう。


意識的に尿を途中で止める練習をしましょう。


 骨盤底筋トレーニング

骨盤底筋を強化するための適切なエクササイズを行うことで、

尿漏れを改善することができます。



 正しい排尿姿勢

 

 正しい排尿姿勢を保つことも尿漏れを改善するために重要です。

トイレに行く際には、背すじを伸ばし、膝をやや曲げた姿勢を取ります。

また、排尿中に急いだり無理に力を入れないように注意します。


 ストレス管理

ストレスは尿漏れの原因となることがあります。

リラックスするためには、ストレス発散法や深呼吸などのリラックステクニックを取り入れることが有効です。

また、十分な睡眠をとることもストレスを軽減し、尿漏れを改善するのに役立ちます。


  痔(じ)


原因


 出産による圧力


 骨盤の変化


出産によって骨盤が広がり、骨盤底筋や骨盤周囲の筋肉が緩むことで

肛門周囲の静脈に圧力がかかりやすくなります。


これによって、痔の原因となる静脈の拡張や出血が起こることがあります。


 体重増加

妊娠中に体重が増加することで、骨盤にかかる圧力が増し、

肛門周囲の静脈が圧迫される可能性が高まります。


これが痔の発症を促す要因の一つとなります。


 排便時の圧力

出産後の便秘や排便時の圧力が増加することで、

肛門周囲の静脈に負担がかかり、痔の発症を引き起こす可能性があります。


特に便秘が続くと、排便時に強い圧力がかかりやすくなります。


 運動不足

出産後は体を動かす機会が減ることが多いため、骨盤周辺の筋肉が衰えやすくなります。

これによって、肛門周囲の静脈の血液循環が悪化し、痔の発症を促進する可能性があります。

 

便秘

 

 ホルモンバランスの変化

出産後、女性の体内でホルモンバランスが大きく変化します。

特にプロゲステロンというホルモンの分泌が減少することで、腸の動きが鈍くなり、便秘が起こりやすくなります。


 出産に伴うストレス

出産は身体的な負担だけでなく、精神的なストレスも伴います。

そのため、出産後のストレスや疲労が便秘を引き起こすことがあります。


 運動不足



出産後は育児や家事に忙しく、十分な運動を取る機会が減ることがあります。

運動不足は腸の動きを鈍らせ、便秘を引き起こす要因となります。


 食生活の変化


 出産後は食事の時間や内容が不規則になりがちです。

また、授乳中は栄養を考えた食事を心がけるため、

食物繊維や水分の摂取が不足しがちになります。


これらは便秘を招く要因となります。


 便意を我慢する習慣


出産後は育児や家事に追われて、トイレに行く時間がなかなか取れないことがあります。

便意を我慢することで腸の動きが鈍り、便秘を引き起こすことがあります。


症状


出血

便通時に血が混じったり、トイレットペーパーや便器に血が付くことがあります。


かゆみや痛み

 肛門周囲がかゆくなったり、痛みを感じることがあります。


しこりや腫れ

 肛門周囲にしこりや腫れが現れることがあります。


改善方法

 

バランスの取れた食事


高野菜食を心がける際には、他の栄養素もバランスよく摂取することが重要です。

たんぱく質や脂肪、ビタミン、ミネラルなどもバランスよく摂取しましょう。

 

野菜



野菜は食物繊維が豊富であり、葉野菜や根菜などさまざまな種類があります。

特に緑黄色野菜や葉物野菜、根菜類などの野菜には多くの食物繊維が含まれています。


例えば、ほうれん草、ブロッコリー、キャベツ、にんじんなどが挙げられます。


果物



果物も食物繊維が豊富であり、特に皮を一緒に摂ることでより

多くの食物繊維を摂取することができます。


リンゴや梨、キウイ、ブドウなどが代表的な果物です。

ドライフルーツも便秘解消に役立ちます。

また、プルーンは緩便作用があります。


穀物

穀物製品も食物繊維を含んでいます。

全粒穀物や糠、オートミールなどを積極的に摂取することで、

便通を促進することができます。


また、食事の主食として玄米や全粒粉のパンを選ぶと良いでしょう。

 

水分摂取


十分な水分を摂取することも重要です。

食物繊維は水分と一緒に膨れて腸内でゆっくりと動きますので、

水分不足だと逆に便秘を悪化させることがあります。


十分な水分を摂取することで、便の柔軟性を保ち、便秘を予防します。


薬物療法

 医師の指示に従い、痔に対する薬物療法を行うことで、

症状を軽減することができます。


まとめ


以上のように、尿漏れと痔は産後によく見られる問題ですが、

適切なケアや生活習慣の改善によって、症状を軽減し、快適な生活を送ることができます。


症状が重い場合や自己管理が難しい場合は、医師に相談することで徐々に改善する場合が

ほとんどです。


入浴や、シャワー、などで身体中の循環を良くして

産後の回復を促すことが大切です。

 

調査によれば、産後1ヶ月の経膣分娩では3割が尿失禁があるようです。

また約3人に1人が痔に悩まされているとされています。



時間をかけて治っていく場合が多いですが、恥ずかしがらずに、

ひどくなる場合は専門医に相談してみましょう。